起業家・ベンチャー・進出企業と連携して新しい価値を生み出す

仙台商工会議所青年部の福田さん

仙台商工会議所青年部(仙台YEG)
平成29年度会長 福田 大輔(ふくだ だいすけ)

1976年、宮城県生まれ。東北大学経済学部を卒業し、銀行勤務を経て、家業のため株式会社福田商会に入社。昨年、仙台商工会議所青年部(仙台YEG)の平成29年度会長に就任。

起業や県外企業の進出気運が盛り上がる仙台・宮城。そうした“外からの血”に対して地元の経営者たちはなにを思っているのでしょう? 仙台の若手経営者が集まる仙台商工会議所青年部の平成29年度会長で農業・建築関連やホテル業など地域に根ざした事業を幅広く展開している株式会社福田商会の代表を務める福田さんにホンネのところを聞きました。震災でもらった支援に対する恩を「連携のチカラ」で倍返し。そんな想いでまとまっているそうですよ。

異なる視座が大切

――東北人の気質は実直で口が重く、郷土を大切にし、地域のしきたりや繋がりを大切にする。そんなイメージが一般にあります。

郷土愛が強いというのはそのとおりだと思います。…でも、本当に言いたいことは、要するに排他的、ということですよね?

――そんなつもりはないんですけど(汗)、県外の企業や起業を志している人からすれば、地元企業のみなさんから歓迎されるかな、なんていう心配をしている人がいるかもしれないと思ってたりしています。実際のところ、仙台ならではの経営者の特徴ってどうなんでしょう。

いち概には言えないですけど、県外の人や若い人から見たら確かにとっつきにくい印象があるかもしれませんね(苦笑)。でも、内側に入ってもらえれば排他的というのは先入観にすぎないとわかってくれるはずです。

県外企業の進出が活発化したり、ここでベンチャーが増えることは地域経済の観点からもいいことだし、仙台の経営者にとっても大きなプラスになる。みなさんそう思っています。たとえば私が平成29年度会長に就任した仙台商工会議所青年部(以下、仙台YEG)の上部団体である仙台商工会議所(以下、商工会議所)には東京など県外から進出してきた企業にも加入いただいて、さまざまな活動を一緒に行っています。

――全然、閉鎖的じゃないんですね。

多くの仙台の経営者は震災で全国から頂戴した支援に対して恩返しをしたい、と思っています。それも、半沢直樹じゃないですけど、いい意味での倍返しで。それには復興を遂げるだけではなく、被災地や仙台を以前にもまして発展させ、「支援してよかった」と思われるような地域にしなければいけない。そのためにも県外の企業や起業家とコラボしていきたいと思っています。

県外企業や起業家と地元企業では、確かに視座が違う部分があります。でも、それが大事なんですよ。立場が違えば考え方や見方が変わって当然で、アイデアも異なります。そうした思ってもみなかった視座に触れることで、従来の延長上にはない新しい発想が生まれ、経営者として成長するきっかけにもなるんです。

ですから、県外の企業や起業家と積極的にからんだほうがおもしろいことができるはず。そうした連携を商工会議所や仙台YEGでも行っています。たとえば東北大学との連携もその一例です。

連携で生まれた“経営者道場”

――どのような連携をしているんですか。

東北大学大学院経済学研究科地域イノベーション研究センターと連携して“経営者塾”設立に協力させて頂きました。同センターは大学内外の知的能力を結集して教育研究活動を行うことによって東北地域のイノベーション能力の向上を図り、東北地域の産業振興と経済発展に貢献するための諸事業に取り組むことを目的としており、東日本大震災以降は「地域産業復興調査研究プロジェクト」や「東北発水産業イノベーションプロジェクト」にも取り組んでいます。同センターの活動は、地域の企業、自治体、NPOなどの実務家たちと交流する場としても機能しています。

“経営者塾”の正式名称は「地域イノベーションプロデューサー塾(以下、RIPS)」。中小企業の経営人材などを対象に、地域における新たな雇用機会の創出と産業振興に貢献できる“革新的なプロデューサー”の育成を目指しています。2年ほど前からは、金融機関の職員などのいわゆる支援者を育成する塾「地域イノベーションアドバイザー塾」が併設され、その塾生との共同学習、ビジネスプランの議論が行われるなど世界的にも類例を見ない経営者塾になっています。

震災直後だったと記憶していますが、東北大学の先生方と仙台YEGのメンバーが膝を突き合わせて「これを学べばもっと発展できる」という項目を提言させて頂き、それらを一連のカリキュラムにして頂いたものがRIPSでした。

入塾、卒塾の条件は厳しく設定されました。入塾の条件は具体的な新規事業プランを持ち込むこと。入塾後は基本的な講義を受けつつ、自分がつくった新規事業プランをほかのRIPS塾生の経営者や大学の先生たちとブラッシュアップしていきます。そして最終的なプランをプレゼンして合格しないと卒塾できない。そんな仕組みになっています。

――かなりシビアな“経営者道場”ですね。

ええ。ただし、事業プランさえあれば企業規模や業歴は関係なく、実績がない起業家も入塾可能。岩手や福島からの参加者もいて、これまでに175名の経営者が卒塾しました。私もRIPSで鍛えられたひとりです。

RIPSでの学びを活かして私自身が取り組んだ事業の一つが、震災による津波で塩害被害にあった農業再生を目的とした飼料米事業。塩害被害にあった田んぼでは大豆などの転作は難しく、主食用のお米も収量が上がりません。そうした場所で品種特性として多収性のある飼料米を生産してもらい、圧ぺん(※)という処理をして塩害被害にあった地域で収穫した飼料米を牛用飼料に加工する、というものです。農業再生につながるだけではなく、輸入に依存している飼料原料を国産に切り替えることができ、海外に払っているお金を地元に還流させることもできる。そんなビジョンがありました。

※圧ぺん:蒸気で加熱し、ロール機でフレーク状にした後、冷却・乾燥する加工処理のこと。牛に生米を与えても消化吸収できないが、加熱処理してアルファ化することで消化吸収できるようになる。一定割合の飼料米を牛に与えると肉質を柔らかくおいしくする不飽和脂肪酸のオレイン酸が増える。
この事業プランは日本商工会議所青年部が主催しているビジネスコンテストでグランプリ日商会頭賞を獲得することができました。準グランプリの2名も仙台YEGのメンバーで、この年は仙台メンバーが全国トップ3を独占しました。その後、4年連続して仙台YEGのメンバーが様々な賞を受賞しています。東北大学との連携は仙台の若手経営者を大きく底上げしてくれました。

ちなみに、この飼料米事業は私が代表を務める会社で実際に事業化しています。「地域に貢献したい」との想いを出発点とした原石のようなアイデアでしたが、RIPSを通じて多様な視座にさらしたことにより、刺激を受け、思わぬ発見もあり、実際の事業化が実現しました。

「新しい風」をどんどん受け入れたい

――連携から新しい価値が生まれた見本ですね。

想いを同じくする仲間が連携すれば、どんな壁も乗り越えられると思います。

最近、シェアオフィスやコワーキングスペースが仙台市でも生まれていますが、仙台の魅力を高めてくれると期待しています。シェアオフィスやコワーキングスペースは起業家やベンチャーだけではなく、仙台に進出する企業も利用するはずで、多用な視座が集まる場です。こうした施設を利用して仙台で起業して成功する、他県から仙台にきて起業して成功する、あるいは進出して事業を拡大する。そんな成功事例が増えれば、仙台はよりおもしろい街になるでしょう。

――仙台YEGの平成29年度会長としての今後のビジョンを聞かせてください。

起業する人や進出する企業をどんどん仙台YEGのメンバーとして受け入れていきたいですね。新しい風が吹くことで、お互いに協力できること、連携できることもいろいろ生まれてくると思います。

商工会議所としても起業した方々に対して、ステップアップできるような応援のプランも用意しています。さまざまな人たちと連携しながら、これからも仙台・宮城、そして東北を盛り上げていきたいですね。