楽天株式会社の南條さん
楽天株式会社 コマースカンパニー
ECマーケットプレイスビジネスサポート開発部
ECビジネスエンパワーメント課 シニアマネージャー 南條 融(なんじょう とおる)
宮城県仙台市生まれ、仙台育ち。東北学院大学卒業後に上京し、ソフトウェアの販売会社とITベンチャー企業でソフトウェアの開発・保守・運用の経験を積み、2008年にUターンで楽天株式会社に入社。仙台支社立ち上げメンバーとして、『楽天市場』の営業支援システムの構築から、東北楽天ゴールデンイーグルスのシステム拡充などに携わり、2012年からマネージャーの職責を担う。現在は、『楽天市場』を取り巻く様々な課題に対して最適なシステムを提案・開発すべく奮闘中。
日本を代表するメガベンチャー、楽天。社内の公用語を英語にしたり、越境EC事業を展開したり、その視点の先はグローバルに向いています。そんな楽天は仙台にも支社を構えていますが、どんな事業を行っているか知っていますか?仙台支社の南條さんによると、業務のうえで仙台や東京という垣根はなく、グループにおけるビジネスの最前線でシステム開発などを行っているそうです。そんな、「グローカル」なビジネスを体現する仙台支社における事業内容などについて、南條さんに聞きました。
先端サービスの開発に携わる
――仙台支社ではどのような事業を行っているのでしょうか。
楽天グループは「コマースカンパニー」や「メディア&スポーツカンパニー」など、事業ごとにカンパニーがわかれていますが、仙台支社には同じ楽天グループとして、異なるカンパニーの社員が一緒に集まって働いています。具体的なサービスでいうと、インターネット・ショッピングモールの『楽天市場』、クレジットカードの『楽天カード』、旅行予約サイトの『楽天トラベル』、ゴルフのオンライン予約サービス『楽天GORA』など、各事業の社員、総勢約80人が勤務しています。
仙台支社は当初、『楽天市場』事業における地方の営業拠点として2004年に開設されました。それから、私が入社した2008年には、「新サービス開発部」というエンジニアのチームが立ち上がり、東北楽天ゴールデンイーグルスに関連するWebシステムなど、一部の開発業務を手がけるようになりました。しかし、野球はシーズンもので、イーグルス関連の開発案件は年間を通してつねにあるわけではありません。そこで、社内営業を通じて、これまで東京の本社で行っていた案件を少しずつ仙台に移管していく方針となりました。そこから、『楽天市場』に関連する案件も含め、さまざまな開発を手がける拠点に育っていったのです。
――南條さんの業務内容を教えてください。
コマースカンパニーの開発部門でエンジニアたちを統括しています。『楽天市場』の開発部門は、担当するシステムの対象別に、大きく3つにわかれます。ひとつは、『楽天市場』のユーザーを対象としたシステムの開発。2つめは、『楽天市場』に出店する店舗向けシステムの開発。3つめは、私が所属する「ビジネスサポート開発部」です。ここでは、システム開発やデータの管理・運用を通じて、楽天社内の業務支援を行っています。
そのなかで、私がシニアマネージャーとして管轄する「ECビジネスエンパワーメント課」は、全国に約70人のエンジニアを抱えています。エンジニアたちは、仙台のほか、東京と大阪、福岡の拠点でそれぞれ業務に携わっています。つまり、私は仙台にいながらにして、国内4拠点のマネジメントをしているというわけです。
最近の「ECマーケットプレイスビジネスサポート開発部」は、『楽天市場』の請求管理や店舗ユーザー間コミュニケーションシステム、顧客管理といった、ユーザーや出店店舗向けの周辺システムにも開発対象を広げています。社内向けシステムの開発にとどまらなくなってきました。
『楽天市場』内でユーザーと出店店舗がリアルタイムにオンラインで会話できるチャット機能も、私の開発部隊が開発したんです。このサービスは、『楽天市場』の出店店舗が集い、毎年夏に開催する大規模イベント『楽天EXPO』で初めてお披露目されましたよ。
東京と地方の垣根はない
――注目の新サービスは南條さんが仙台で指揮をとって開発したものだったのですね。
ええ。しかし、シニアマネージャーとしての私が「仙台にいる」というだけで、楽天の開発業務においては地方や東京といった垣根はないんです。
支社の設立当初はローカル拠点としての色が強かったのですが、開発業務の積み重ねによって、仙台支社の役割から「仙台」という冠が次第に取れていきました。
――ローカル拠点というよりは、「楽天の縮図のひとつ」というようなイメージなんですね。仙台支社でも公用語は英語なのでしょうか?
もちろん、そうです。実際に、ECビジネスエンパワーメント課のうち仙台支社で働くエンジニア約15名のうち、半分ほどは外国籍の方が占めています。出身地は韓国や中国、アメリカ、スイス、カナダ、ベトナムなどさまざまです。
こうした外国籍の社員は、「奥さんや旦那さんが東北地方の方」という理由で入社した人が多いんです。家族の事情で東北に来て、自分が貢献できる仕事がないか探していたところ、社内で英語が通じ、グループ全体のビジネスに携われる楽天を見つけるんです。「東北で生活しながらもグローバルな仕事にかかわれるから」という理由で楽天を選んでくれるんですよ。
――そんな会社は珍しいのではないでしょうか。
確かに、そうですね。仙台では多様な人材の受け皿になるような大きな会社がもっと育っていったり、東京から進出してくるようにしなければいけないと思います。ですが、働ける場所を自由に選べる世の中にはなってきていると思います。東京からは新幹線に1時間半乗っただけで行くことができますしね。業態にもよりますが、私たちのようなITやテクノロジーの分野でしたら、仙台でも東京と変わらない業務が可能ですから。
仙台でグループのビジョン実現に貢献したい
――仙台では最近特に、ITや起業をキーワードにまちを盛り上げようという動きが活発化しています。
そうですね。コワーキングスペースやオフィススペースなども増えてきていて、仙台に来たときに気軽に立ち寄って仕事をしたり、会議やイベントを開いたりすることができるようになりました。
しかし、スタートアップやベンチャー企業が増えていっても、開発人材だけではビジネスが広がっていきません。ビジネスをスケールするには、営業部隊やネットワーク、経営の知識をもった人たちだって必要ですよね。ビジネスをしやすい環境がもっと整っていけば、多様な人材がこれからどんどん仙台に集まってくるのではないでしょうか。
――最後に、南條さんの展望について聞かせてください。
まず、私の第一ミッションとして、『楽天市場』を中心としたサービスの価値をより強化できる開発組織を育てていきたいですね。そして、楽天のファンをもっと増やし、『楽天市場』を日本でいちばん利用されるECプラットフォームとして支えていくことが私の夢です。
楽天は創業以来、「エンパワーメント」という言葉を事業の基本となる価値観として掲げてきました。私は仙台で働いていますが、楽天の仕事を通じて、仙台や東北に限らず、日本全国の地方に活力を与えていきたいですね。
それから、「自分の地元である仙台で働く私」という視点からは、仙台でもこうしたグループとしての夢やビジョンを追うことができ、ハイレベルな仕事に携われるという魅力を、もっと多くの人に伝えていきたいと思っています。