株式会社メルカリ CSグループ 佐藤さん
埼玉県出身、大学を卒業後(途中、アメリカ留学を経験)
株式会社エイチ・アイ・エスに入社し、企業向けの営業として、
海外視察旅行、研修旅行の、学校の修学旅行等を企画、運営、現地におけるコーディネーターを担当。
その後、飯田グループホールディングスへ転職し、人事、総務、財務を担当。
その後仙台へ移住し、株式会社メルカリにおいて人事・総務・労務を担当。
また、仙台のIT企業・仙台市と共に、仙台のIT業界の活性化にも注力。
フリマアプリ「メルカリ」などを運営し、驚異の成長を続ける株式会社メルカリ。
そんな同社が仙台に国内社員の約3分の1が集中している大規模拠点をもっているって、知ってました?
同社初の地方拠点として仙台に進出したのは事業開始翌年の2014年。なぜ、仙台だったのか。
仙台オフィス立ち上げに携わった運営責任者でCSグループの佐藤さんに取材しました。
「メルカリ×仙台」は、新しいワクワクを次々と生んでいるみたいですよ。
教育環境、東京の近さ、優秀な人材の層の厚さ
――アメリカ、イギリスに海外現地法人をつくり、2013年の事業開始から一気にグローバル進出はかっているメルカリが仙台に拠点をもっていたなんて、意外でした。
地方拠点が必要になったときに、「じゃあ仙台だよね」と迷わず決まったと聞いています。
当社としては意外でもなんでもないんですけどね。
――当然の選択だったということですね。理由を教えてください。
お客さまから頂く取引におけるお困り事を解決するカスタマーサポートの拡充が必要になり、創業の翌年に仙台オフィスをつくりました。いろんな候補地を比較検討したのではなく、最初から仙台しかないというイメージでした。
その理由としては、まず仙台は東北唯一の100万人都市で東北大学を中心とした教育環境が充実していること。新幹線で東京とは最短1時間30分という近距離で交通の便がいい。それに仙台にはコールセンターが数多くあり、カスタマーサポートの経験者も多い。こうしたことから、仙台にはぼくたちが求めるような優秀な人材がたくさんいると思いました。実際、そのとおりでしたね。
ちなみに、昨年、福岡でもカスタマーサポートの拠点ができました。これでメルカリの国内拠点は東京、仙台、福岡の3ヵ所。仙台オフィスは地方拠点第1号という位置づけになります。
――仙台オフィスではどんなことをやっているのか、もう少し詳しく聞かせてくれませんか。
もっとも大きな役割はお客さまの「わからない」「困ったなぁ」等の取引にまつわるお困り事を解決に導くのがカスタマーサポート業務です。個人間取引を円滑に進めるため、個人のお客さまからの疑問にお答えし、困りごとを解決に導くお手伝いをするのはとても大切。ある意味、サービスのキモと言える重要な根幹です。この部分は、福岡オフィスができるまでは仙台オフィスですべて取り仕切っていました。
仙台オフィスにしかない役割もあります。それは出品商品のチェック。現在、「メルカリ」には1日100万点以上の出品があるんですが、そのほとんどを仙台オフィスでチェックしています。偽ブランドの出品を防止するというのはわかりやすいと思いますが、意外と「これは問題ないよね」と思うような商品でも出品できない場合があるんですよ。
たとえば湿布薬。薬機法に抵触するので実は個人間では売買できません。個人のお客さまは細かいルールまで把握していないことが多く、法律や規則は変わることもあります。ですから、カスタマーサポートは必要不可欠。お客さまをトラブルから守り、CtoCビジネスの健全な発展のためにも商品チェックはすごく大切なんです。
個人間取引の根幹を担う仙台オフィスさ
――なるほど。単にマニュアルどおりにこなせばいいのではなく、CtoCビジネスにおけるカスタマーサポートの重要性を理解したうえでユーザーに対応できる人材が必要、というわけですね。
ええ。「3分で出品できます」といったスピードの速さとともに、出品するお客さまも購入するお客さまも安心して利用できるサービスを提供することがメルカリのミッション。出品のところでいうと、OK・NGという結果だけではなく、「それは、こういう理由でNGなんですよ」としっかりお伝えし、お客さまを正しく道案内していきたいと思っています。仙台オフィスは、そんなCtoC取引の基礎的な部分を担っている重要拠点なんです。
――単なる地方の出先じゃないんですね。現在の規模感を教えてください。
仙台オフィスのスタッフ数は約200名。国内の社員数は約600名なので3分の1程度の人員が仙台に集中していることになります。トラストタワーという東北でもっとも高いビルのなかの1フロアを借りていて、ここには2017年12月に移転してきました。
実は今回が3度目のオフィス移転なんです。最初のオフィスは100坪くらいで、3年は大丈夫かなと思っていたんですが、すぐにスペースが一杯になり、300坪のビルに移りました。そこも3年間は入居する契約だったんですが、予定を前倒しして手狭になってしまい、いまに至っています。
1年周期でオフィス移転している計算になります。移転せずに手狭になったらオフィス分散させる方法もありますけど、メルカリには「All for One」と言うバリューがあり、メンバーがひとつの場所に集まって、みんなで顔をつき合わせてチームで仕事をしていこうという一体感を大切にしています。ですから、オフィス分散はいまのところ考えていません。
起業の気運が盛り上がっている
――仙台ならではの人材の特徴とかはあったりしますか。
おもてなしというか、ホスピタリティ精神がすごい強いですね。助け合いとか、困った人を助けようとか、カスタマーサポートにおいてすごく重要な要素を持っている人材が多いし、「もっとこうしてあげよう」とか「こうしてあげたいんです」という提案をもらうことも多いですね。
仙台の起業家やIT人材のことで言うと、いま、すごく盛り上がっています。当社では楽天さん、マクロミルさん、メンバーズさんといった仙台に進出しているIT企業と一緒に「SENDAI IT JAM」という集まりをつくり、仙台市さんと協力して合同会社説明会をしたり、IT人材を対象にしたセミナーやコンテストなどに協力しているんですが、仙台でも自社サービスをつくっていこうという動きがすごく活発化しています。
これまでは東京のサービスの一部を受託するというカタチが少なくなかったと思うんですけど、東北発で全国的なサービスの提供を志しているベンチャーが増加しています。仙台市もさまざまな起業支援をしているので、これからもっとITなどで起業を志す人たちが増えていくでしょう。当社もその支援をしています。
――どんなことをしているんですか。
当社が参加している仙台でのアプリコンテストでは、学生などコンテスト出品者がつくっているアプリをメルカリのエンジニアが開発サポートするなどの協力をしています。仙台のIT人材をサポートや、ITでの起業の盛り上がりを加速できるようなお手伝いは、これからも惜しみません。
最近、本格的なシェアオフィスやコワーキングスペースが仙台で増えつつあるのも、起業を促進する追い風になっています。起業したいと考えている学生などをサポートしていると、アプリ開発や起業する場所探しにすごく困っている人が多いので。IT以外でも、コワーキングスペースを中心に活動するNPOなどの団体は多く、社会全体の活性化にもつながるでしょう。
――今後の目標を聞かせてください。
これからも新たな価値をカスタマーサポートでつくることが今後の目標です。CtoCサービスにはテンプレートがなく、お客さま一人ひとりに合ったサポートを行うことが大切。理想をいえば、お客さまが10人いたら10通りのサポートを提供したい。そんなAIにはできないような顧客価値の最大化を目指しています。仙台オフィスや福岡オフィスをさらに成長させ、どこにも負けない存在、日本のカスタマーサポートをリードできる存在になっていきたいですね。